二・二八事件の処理は物質的補償と精神的救済の二つの側面から行われます。基金会が1995年以来行っている業務のあらましは以下の通りです。

一、被害者への賠償金の交付:

 二・二八事件被害者に対する賠償金の審査および交付は、基金会設立当初からの主な仕事です。董事会は法律に基づいて認められた権限により、賠償金の審査の流れと交付基準を定め、被害の程度に応じて被害者またはその家族に賠償金を給付します(国籍不問)。最高額は台湾元(以下同)600万元で、申請期限は2022年1月18日までとしています。1995年から2020年3月までに当会の審査を通過した二・二八事件被害件数は計2,862件で、そのうち「死亡」は686件、「行方不明」は181件、「その他」(監禁、負傷、名誉毀損など)は1,455件です。賠償金の受領者数(被害者本人、被害者遺族を含む)は計10,156人、賠償金は政府の予算から支出されており、総額は約72億6,390万元に上ります。

二、教育普及および真相研究:

 教育普及については、ウェブサイトの構築、会報の発行、教材の編集・印刷、映像製作(『傷痕二二八』、『台湾百合』)、補助教材の作成、関連のPR活動などを行っています。真相研究に関しては、『二二八事件檔案史料彙編』(2002)、『二・二八事件責任帰属研究報告』(2006)、『二二八事件の真相と移行期正義』(2021)の出版、『二二八事件辭典』(2008)の編纂、学術シンポジウムの開催(1997~2019)、口述歴史取材や被害者の地域別座談会の実施などを行っています。

三、歴史の痛みの治癒および名誉回復:

 歴史の傷を癒やすため、当会は毎年2月28日に「中枢紀念儀式」を開催しています。式典には総統を招き、総統から談話が発表されます。仏教およびキリスト教式の式典を開き、被害者やその家族の傷ついた心を癒やしています。高齢の被害者や遺族配偶者、中低収入の遺族を訪問して弔慰金を贈るほか、遺族奨学金の設置、犠牲者遺骸の安置なども行っています。このほか、被害者の名誉回復のため、重要式典において総統から被害者またはその遺族に「名誉回復証書」を直接授与すると共に、被害の過程を「処理報告書」としてまとめ、政府公報に掲載しています。

四、エスニックグループの調和促進:

 社会各界に二・二八事件関連行事への参加を促し、エスニックグループの調和と台湾の平和という目的を達成するため、当会は記念音楽会や史料展、美術展を不定期に開催するほか、記念硬貨(50周年)、記念切手(60周年)の発行、さまざまな文化活動の実施などを行っています。

 政府は2007年、基金会を常設機構として改編し、記念や教育、文化などの方向に転換することを決めました。以後の業務の重点は下記の通りです。

一、2009年までに条例を改正:

 二・二八事件関連の文物、史料、文献の保存、整理などの関連業務のため、中央政府が二二八国家紀念館を設置し、紀念基金会に運営、管理を委託することが明記され、基金会の常設や記念館の運営が法制化されました。

二、二二八国家紀念館の全面的な運営:

 政府は2006年、二・二八事件の記念的価値を明確に示すことを目的に、台北市南海路に位置する旧台湾教育会館に二二八国家紀念館を設置することを決め、当会に運営管理を委託しました。2011年2月28日に全面的に供用開始され、記念的意義や教育、文化機能を備えた台湾初の国家レベルの人権記念館となりました。

三、文物の収集と保存:

 基金会は二・二八事件や台湾の戒厳令時代に関する文物、写真、書籍、映像、関連の文化・芸術作品などを、引き続き規模を拡大して収集、保存、展示しています。これらは学術研究や教育普及、国際交流などの目的で使用されています。

四、歴史文化教育の普及:

 当館は常設展や特別展、テーマ展のほか、人権映像の放映や各種イベントを開催しており、その内容は多岐にわたります。開館以来、社会各界の人々が来館しており、特に政府機関や教育団体から重視され、数十回のガイドツアーや座談会を相次いで実施し、教育普及の機能を十分に発揮しています。

五、国際交流の推進:

 当館には開館以来、日本や韓国、東南アジア、欧米などの地域から外国人が訪れており、当館の海外での知名度が高まっていることがうかがえます。今後は各国の人権組織や団体との業務交流や歴史経験の情報交換を行い、台湾の移行期の正義に国際的視野を持たせたいと考えています。