学校への統制強化:学校における指導強化
事件に加わった学生について、国民政府は、学生なので事の是非の判断ができず、事の重大性や緊急性、そして国の情勢を理解していなかったために規則を破って行動してしまったと考えました。そこで、学生たちの行動や学校の雰囲気を正し、学生たちの規範を再構築するため、学校における指導を強化すべきだと考えました。学校側には、常に真摯に反省を行い、適切に対策を講じ、おざなりな措置や同じ失敗を繰り返してはいけない、と指示しました。
台湾省各省立中等以上の学校における「二二八」事件後の指導実施上の注意事項
一、国父(孫文)の教え、総裁の言葉の重要な意義、近年来の国の進歩と国民革命の史実およびその精神を説き、若者たちの三民主義への信仰を揺るぎないものとする。
二、中国の悠久な歴史、地理、偉大な文化財、法令制度の該博さを説き、民族意識と国家の概念を育てる。
三、台湾と祖国の関係および日本統治時代の抗日運動の功績や祖国が幾度も台湾を守ろうとした運動について説くことで、台湾が本来中国の領土であったこと、そして台湾同胞はすなわち中華民族の末裔であることをしっかりと理解させる。
四、日本による五十年来の台湾同胞に対する奴隷化教育の陰謀を暴くことで、日本を盲信する心理を打ち砕き、自ら徹底的に恥辱を断ち切らねばならないことを悟らせる。
五、世界の現状と国際情勢を報じ、取り分け第二次世界大戦後、各国が感じた困難について述べ、中国だけがこうした状況であるわけではなく、また台湾だけがこうした特異な状況ではないことを知らしめ、遠大な視野をもたせる。そして、中国と外国の現在の状況について正しい認識をもたせる。
六、「四維」、「八徳」の主旨を説くと共に、「身体力行(自ら体験し努力実践する)」を指導することで、青年のよくない気質を正し、正しい人生観と社会観を確立させる。
七、思い上がった傲慢な、あるいは非常識で道義に背いた言動を厳しく正すことで、自らを省みて、「過ちては則ち改むるに憚ること勿れ」という精神を発揮することができる。そして、随時、「忠恕(自分の良心に忠実で思いやりが深いこと)の道」、「己立たんと欲して人を立たしむ」、「己達せんと欲して人を達す」、「民胞物與(人びとは皆同胞とみなし、物は全て同類とみなす)」といった中国の倫理観を教え込むことによって、識見・気概を培う。
八、外省人の来台の目的は、新しい台湾を建設する手助けをすることであり、本省人が中国の内地各省へ向かうのと同じであることを説くことで、本省、外省とわけることをやめ、誠心誠意団結させる。
九、正義感を養うことにより、物事の是非がはっきり区別でき、何を選択すべきかをわかるようにする。
十、「論理」の訓練を強化することにより、物事を正しく観察し判断でき、誤った考えを正すことができる。
十一、自由に対する正しい認識を啓発すると共に、合法的で合理的な自由を得るための厳しい教育を行う。
十二、正しい世論を扶植し、社会的な制裁を推奨する。少数が多数に従うことを定着させ、少数が多数を脅迫することを改めると共に、優秀な人びとを育て、民主的なやり方を確立する。
十三、奴隷化教育の悪影響を根絶し、日本統治時代から残るよくない法律制度、生活習慣、言語、服装を一律禁止する。
十四、台湾は中国の一つの省であり、中国の言語を話し、中国の文字を使わなければならない。教師、生徒はこれを確実に行わなければならない。
十五、日本の書籍は期限を切って検閲をしなければならない。軍国主義思想を鼓吹し、国父の教えや総裁の言論に反するもの、または中国の国策に抵触するものは、それぞれ封印するか、教育処に焼却処分の許可を得なければならない。また、教師は授業以外の時間を利用して青年の必読書─「浅明小冊子」─を編著し、心の糧の不足分を補わなければならない。
十六、学校は指導に適切な環境を整えた上で、語学の訓練を強化する。ことばの隔たりをなくすことによって、指導を推し進めやすいようにする。
十七、忠節を貫き、正義のために勇敢な行動をした教職員、生徒、民衆を表彰し、皆の手本とする。
十八、暴動を起こした人びとを徹底的に調べ心から懺悔させる。ただし、報復行為をしてはならない。